PATM予備調査の結果
先行聴き取り調査
アンケートを作成するために先んじて聴き取り調査を行わせていただきました。
まず、PATM発症のきっかけと思われるものには、会社や学校でのストレス、手術によるものが聞き取れました。ただ、健康的な生活を行っており、心当たりがないという回答もあり原因を考える上で断定できるようなものはありませんでした。
また、日々の生活や体質についても質問しました。睡眠時間や食生活、体調の変化、漢方における体質など。興味深いことに人間ドックでもなんの異常もなかったということも聞き取れました。また、リーキーガット症候群が原因ではないかと考える人も多くいましたが、現在学術的にもわかっていることはPATM患者の皮膚ガスからトルエンが検出されたくらいで、西洋医学ではまだ解明できないところにPATMの原因があるのではないかと考えています。
そこで私が以前から目をつけていた東洋医学からアプローチできないかと考えました。東洋医学は中医学と漢方医学とありますが、今回は漢方医学に着目をしています。
それぞれの分野で処方する薬である西洋薬と漢方薬では目的が異なります。西洋薬では症状をコントロールして重症化を防ぎ、進行を抑える、また原因となる菌や細胞を攻撃して改善させることが目的に対し、漢方薬は原因を究明し、それに基づき内蔵機能を正すことで根本改善を促すことを目的としています。
私は内蔵機能を正すことで、PATM改善のヒントが得られるのではないかと考えています。
アンケート方法について
今回のアンケートでは、漢方薬における体質(今後は病態と記述します。)に関する質問を中心に、聴き取り調査を行った結果を元に作成しました。アンケート調査の方法についてはTwitterにおけるPATM症状がある方を対象に回答してもらいました。
アンケートの内容については大きく2つです。病態に関する内容と生活習慣に関する内容です。
病態に関する内容は、どの病態が当てはまるのかを診るために日頃の症状をお聞きしています。基本的に病態は6つの病態に分けられますが、複数の病態が複合して現れることもままあります。病態は以下の6つです。気虚、気滞、血虚、瘀血、陰虚、痰湿とあります。この内容については後述いたします。
また、生活習慣に関する内容は、睡眠、運動、食事について質問しています。
睡眠時間については聞き取り調査で健康的な水準のものや極端に少ないものもあり、PATMに本当に関わるものなのか確認するためにアンケートに加えました。
また、運動については聞き取り調査においてアスリートのような生活を送っていた方もいらっしゃったため、ストレスとして関わりがあるのか、また反対に運動不足による疾患と関わりがあるのかを確認するためにアンケートに加えております。
次に食事については「ジャンクフードをよく食べていた」、「栄養バランスの極端に偏ったもの」、「バランスの良い食事を1日3食食べていた」という回答があり、それぞれ関連性が見えにくい回答でしたので、広く意見を集めました。
アンケート結果について
今回のアンケートではPATM症状のある方49名にご協力いただけました。この場を借りてご協力いただきましたことを深く感謝いたします。
- 漢方の病態に関する質問について
まず、気虚に関する質問についての結果です。質問の内容は「当てはまる選択肢を複数ご選択ください。」というものです。
気虚とは、心身ともに元気不足状態のことを言います。脾(消化器系の総称)や肺の働きがストレスや疲労、病気などの原因によって妨げられ、低下することでその状態が慢性化した状態です。脾とは膵臓のような働きをすると考えられている消化器系を総称するような臓腑のことを指しています。食事で取り入れた栄養を脾で消化吸収し、心身を動かすエネルギーを作り出す働きを持ちます。
今回の結果を見る限り、「すぐに疲れる」「気力が湧かない」「記憶や集中力が落ちている」に当てはまると回答した方が多数います。
次に、気滞に関する質問についての結果です。同じく質問の内容は「当てはまる選択肢を複数ご選択ください。」というものです。
気滞とは、気が塞がり精神不安定でイライラした状態のことを言います。気とは心身を動かすためのエネルギーだと言われています。慢性的なストレスや精神的な過労を主たる原因として、気を巡らせる「肝」の働きが低下している状態です。漢方における肝とは、西洋医学でいう肝臓の働きに当たります。漢方でいう気の巡りとは西洋医学でいうところの自律神経の働きに近いものです。
今回の結果を見ると「精神的に不安定である」というものが多数で、次いで「ガスが溜まる」というものが半数になります。
次に、血虚に関する質問についての結果です。同じく質問の内容は「当てはまる選択肢を複数ご選択ください。」というものです。
血虚とは、造血能力が低く、血液が不足する体質のことです。血虚の原因は様々あります。事故や大病、手術などで大量の出血、脾の機能低下や慢性的な疲労、肝の機能低下、心の機能失調などがあります。心とは心臓の機能とこころの安定の働きを持つと考えられています。
今回の結果を見ると上記の気虚の質問と同様に「疲れやすい」というものが多数で、次いで「乾燥である」というものが半数になります。
瘀血
次に、瘀血に関する質問についての結果です。同じく質問の内容は「当てはまる選択肢を複数ご選択ください。」というものです。
瘀血とは、血液がドロドロで循環が不全のタイプです。遺伝や体質が原因のこともありますが、気虚や血虚などの病態のほか、不眠、暴飲暴食など不規則な生活習慣が長期間続くことが原因であったりもします。
今回の結果を見ると「肩がこりやすい」というものが半数を超えています。
次に、陰虚に関する質問についての結果です。同じく質問の内容は「当てはまる選択肢を複数ご選択ください。」というものです。
陰虚とは体内のうるおいが不足しカラカラしたほてる病態です。体液が不足した状態であり、大量の発汗や慢性病により体液が消耗したことによる病態です。
今回の結果を見ると「肌が乾燥する」というものが多いですが、半数には満たない程度です。
次に、痰湿に関する質問についての結果です。同じく質問の内容は「当てはまる選択肢を複数ご選択ください。」というものです。
痰湿とは、暴飲暴食、乱れた生活習慣などにより代謝が低下し体内の水分が停滞し、それが悪性化したものでこれが毒性の高い状態で体内にとどまっている病態のことです。今回の結果を見ると「体がだるい」というものが多数でした。
病態
では、病態に当てはまると思われる人数をそれぞれ以下の図のようになりました。各質問群に対して40%以上当てはまっている方をその病態に当てはまると思われるとしています。
人数は、多い順に「気虚」「気滞」「血虚」「痰湿」となっています。複合して現れることもありますので、いくつかの病態を合わせ持つ人ももちろんいらっしゃいます。
舌診断
次に漢方では病態を診断するために舌診断を行います。舌の状態を確認するために「舌の状態とタイプをお聞きします。以下の画像からタイプをご選択ください。」という質問をしています。画像については、著作権の問題もありますので載せられませんが、概要は以下の通りです。
気虚タイプ「ぽってりと厚く両側に歯形の付く舌」、陽虚タイプ「気虚タイプがすすんで体が冷えているとき、血液のめぐりがわるくなり、白っぽくなる」、肝うつ気滞タイプ「舌の先が赤く、赤い点々がある」、血虚タイプ「舌の色がピンク色よりも淡くなる」、瘀血タイプ「赤紫色の舌、舌の裏の血管がボコボコ」、陰虚タイプ「舌が小さく薄い、裂け目がある」、痰湿タイプ「厚い白い苔、黄色い苔」という画像付きで選択してもらいました。
この結果から「気虚(陽虚)タイプ」が最も多く、次いで「血虚タイプ」が多いことがわかります。ただし、回答者の1人から舌の状態に該当するものがなく気虚タイプに回答したという意見がありました。実際には気虚タイプが1名少ない結果となります。
- 生活習慣について
睡眠
続いて生活習慣についての質問です。睡眠に関しての質問です。以下の3つを質問しています。「あなたは通常どれくらいの睡眠時間をとっていますか。」「あなたは通常の就寝時間を教えてください。」「睡眠の質はどのようなものですか。」というものです。
このアンケート結果は、睡眠時間はやや少ないと言える「4〜5時間」も14%程度で、そのほかは健康的と言われる平均睡眠時間と言われる7時間に近く、健康的な睡眠時間であります。また就寝時間も「2時〜3時」「3時以降」と比較的遅いと思われる時間でも18%程度と少ないです。睡眠の質についても不眠と思われる「あまり眠れていない」も31%程度です。半数以上は眠れているようです。
また、以下の図は睡眠について指数化した物の人数を表したものです。指数化するにあたって、次のような計算をしています。睡眠の質を「よく眠れている」を「5」、「全然眠れていない」を「1」として段階的に数値化します。その数値と睡眠時間の積を睡眠の指数としています。例えば、睡眠時間が「6〜7時間」で睡眠の質が「普通」とした場合、7×3=21となります。
睡眠の指数については「21〜25」が最も多い結果となりました。上記の通り、通常と言える睡眠と思われます。極端に指数が低い方もいらっしゃいますが、全体の半数以下です。
運動
次に運動についてです。質問の内容は「あなたは通常どれくらいの運動時間はどれぐらいですか。」「運動の質はどのようなものですか。」というものです。
このアンケート結果は、運動時間は「全くしない」というものは37%程度で、運動できているようです。また運動の質については、ほとんど3分割されるような割合で「楽である」「非常に楽である」が40%近くになりました。
また、以下の図は運動について指数化した物の人数を表したものです。指数化するにあたって、次のような計算をしています。運動の質を「非常にきつい」を「4」、「全くしていない」を「0」として段階的に数値化します。その数値と運動時間の積を運動の指数としています。例えば、運動時間が「1時間程度」で運動の質が「楽である」とした場合、1×2=2となります。
運動の指数については「0」が最も多い結果となりました。これは全く運動をしていない方を示しています。また、次いで多いのは「2」でした。上記の通り、通常と言える運動と思われます。極端に指数が高い方もいらっしゃいますが、全体のほんの少しです。
食生活
次に食生活に関する質問です。質問の内容は「あなた自身がPATMにかかわりがあると思う食生活について教えてください。」というものです。
回答の内容は以下のようなものでした。
「全く見当がつかないです。 普段は野菜や発酵食品を多めにして健康に気をつけている方です。」
「辛いものを食べたりにんにくや油物形は反応されることが多くなると思う」
「私の場合は、食生活はあまり関係ないですが、乳製品を摂るとお腹がゴロゴロします。」
「砂糖を摂取すると反応が多い気がしていましたが思い込みであるかもしれないと最近思い始めたところです。」
「小麦粉、乳製品」
「油をオメガ6からオメガ3に変える」
「炭水化物」
「栄養不足」
「脂物」
「添加物。化学物質が関係ありそう。」
「コーヒー等、カフェインの摂取」
「乳製品ばかり摂る。」
「ベーコン、チーズ、ウインナー」
「添加物の多い食品 カップ麺、冷凍食品など」
「インスタント食品、砂糖(お菓子)の摂取」
「添加物や油の多い食品(ジャンクフード等)や白米を食べた後は反応が増えるか気がします」
「小麦を多く摂った食生活」
「グルテン、砂糖、添加物」
「発症前は、毎朝高カロリーな菓子パンを食べていましたが、それ以外は健康な食生活でした。運動部に所属していて、野菜もよく摂っていて、不健康とは無縁な状態でした。小麦粉(パン、かりんとうなど)を摂ると症状が悪化するような感じがしますが、本当に食事が原因なのかは分かりません。」
「ジャンクフード、辛い料理、お菓子の食べ過ぎ」
「小麦粉」
「小麦、インスタント麺」
「発酵食品」
「暴飲暴食」
「よく噛まない」
「patmは真菌が原因ではないかと思っているので、真菌を含む食事、つまり発酵物が良くないのではないかと思っている。」
「夜白ご飯を食べなかったら次の日胃もたれみたいな感覚がなくなります。食べ過ぎもpatmに関わってるような気がします。」
「量を食べることが出来ないこと、偏りがあること」
「小麦粉を使った食べ物は症状が出やすくなる様な気がします。」
「砂糖や小麦粉を摂ると反応が増える気がします。」
「豚バラ肉」
「マクドナルド」
「納豆、ニンニクなど匂いの強いもの」
よくみられる意見としてみられるのは「小麦(グルテン)」「砂糖」「発酵食品」「乳製品」「辛い物」といった内容でした。
以上が今回の予備調査におけるアンケート結果です。今後はこちらから本調査をするアンケートを作成するために、仮説を作成していきたいと思います。今後ともご協力をよろしくお願いいたします。